【連載】 はたらくって意外と・・・ Vol.1 安住楽風さん

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「意外と遊べる日野マガジン」に
掲載した 5名のはたらき方を
インタビューしたこのコーナー。

紙面ではお伝えできなかった、
ちょっと詳しいお話をお届けします。

VOL.1 安住楽風さん

日本に古くから伝わる茶道。
そこで使う、抹茶をすくう道具の
「茶杓」を 作っていらっしゃる
茶杓師、安住楽風さん。

一本一本竹を選び、手でけずる。
そのモノづくりにこめた
思いをうかがいました。

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-- 茶杓師って珍しいですよね。
   何かきっかけがあったのですか?


安住さん:
そうですね。 茶杓は、茶道で抹茶をすくう、
ただそのためだけに使用する道具です。

本当にそのためだけに使うので、
茶道をされない方にはまったく必要のない、
ちょっと特殊なものだと思っています。

私はもともと数十年来、
茶道をやってきていて、
最初は道具を使う側だったのですが、
好きが高じて ひょんなことから
茶杓を作ってみたいという興味が
湧いたのがもともとのきっかけです。

その根底にあったのは、
ものづくりが好きだったり、
ちょっと職人気質なところが
あったのかもしれません。

ただ、作るといっても最初は
見よう見まねでした。
私には、特に茶杓づくりの師匠がいないので、
歴史書や古文書を読み解いて、
当時の利用背景や 寸法などを
読み解き学んでいきました。

⁻⁻ 古文書ですか!?すごいですね。


安住さん:


もともとの茶杓のルーツは、
薬をすくう「薬さじ」だったのですよ。

 

そこから派生して
今の茶杓が生まれました。
千利休の時代は、茶席ごとに
使い捨てだったと聞いています。

そういった時代背景も読み解きながら、
制作していくと 作品としての
ブレがなくなります。
これまで1000本くらい作ってきましたよ。

でも、私はそういったこれまでの
茶杓の基本は おさえつつも、
もっと面白いもの楽しい茶杓も
作ってきたいと考えています。


(といって見せて頂いたのは、
伸び縮みをする茶杓。 名付けて亀杓。)

--  作品は個展などに出されているのですか?

はい、5月に三鷹で個展を、
昨年はパリでも 3人展という形で
出展してきました。

またライフワークとして、
茶杓づくりのワークショップも
月に一度開催しています。
竹に自分で線を描き、
けずっていく。
夢中になりますよ!

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そして、茶杓文化を人に
伝えることにも興味があり、
先日京都造形芸術大学の先生に
手紙を出させていただき、
ご縁がありこの夏に講座を
行うことになりました。

自分の少しのアクションから、
お話がつながり とてもうれしく
楽しみにしています。

-- また、茶杓師以外にもお仕事をされているとか?

メインの茶杓師のほかに、
同じく趣味が高じて珈琲店の
オーナーもやっています。

こちらは、もともと珈琲が好きで
焙煎にも熱中しはじめたんです。


数年経った頃、友人たちが買って
くれるようになり、あれよあれよという間にお店を開くことになっていました。


茶杓も珈琲も私にとっては同様で、
興味のあるものに目を向ける、
まずは気持ちのむくままにやってみる。

そこからさらに自分の知りたい欲が
湧いてきて、 学び続けて本当に
仕事になっていくという感じです。

やがて、ひとよりひとつでも、
ふたつでも頭が出れば
プロになれると思いますよ。
そのあと真剣に学び続けていけば
いいのですから。

-- なるほど!
  最後に安住さんにとって
  「はたらくって意外と・・・」を教えてください。

私にとっては、『愉しむこと』です。
茶杓作りも珈琲もまずは自分が作ってみたい、
おいしいものを飲みたいという
とても素直な遊ぶ感覚がはじまりでした。
そして、その感覚は今も続いています。

イリコ (記)
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安住楽風さん
竹坐会 茶杓師 / 珈琲店 和楽 店主
コピーライター / ヒプノセラピスト